1.技術動向調査
分野を鳥瞰したり特定領域を分析する調査です。研究着手時や節目で実施します。
この調査はパテントマップとも呼ばれています。次の3つのタイプがあります。
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1タイプⅠ 数量解析マップ
定義
特許分類(IPC・Fターム)や独自キーワードを用いて出願人別や時系列的に整理したものです。
ココがおすすめ
技術分類毎の参入者数の推移などが見積もれます。
ホームページなどで無料で閲覧できるものもあります。
バブルチャートなど分かり易い図が多用されています。
ココがダメ
自社の研究の具体的な方向が見出せる可能性は低いです。
恣意的(結論ありきで)に作成された様に見えるものも混在します。
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2タイプⅡ 事業戦略マップ
タイプⅡa とタイプⅡbがあります
定義
タイプⅡa 自社を対象として特許他の情報から事業戦略(継続可否等)を考えます
次のような視点で整理していきます
・自社の対象事業について、過去・現在・未来(目標)のシェアと利益率を整理
・ネックを技術(特許)と他(資金やアライアンスなど)に分けて整理
弊社内事例研究資料より
ココがおすすめ
事業継続の可否理由や、重点化ポイントを見つけやすくなります。
※2017年7月17日に日本経済新聞で紹介された「IPランドスケープ」に近い内容です
定義
タイプⅡb 他社を対象として特許情報から事業戦略(買収の可否)を考えます
M&Aの対象企業の評価に用いられます。対象企業が所有する特許の内容と発明者の動きを質的に評価し、買う価値があるのかどうか、技術的に見て将来性はあるのかどうかを見積もります。
【例】 実施例の主要部分が市販品(他の特許)のケース
買っても、直ぐに競合が現れたり、他の特許に触れる可能性が有ります
X社が売り込んで来た「機能性材料A」を含む組成物の特許。
注)出願人が特定できないよう加工したデータを用いています。
【例】 長年中心となって研究を引っ張ってきた「キー発明者」が退職し
後継者も育っていないケース。
将来が不透明です。
注)出願人が特定できないよう加工したデータを用いています。
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3タイプⅢ 技術開発戦略
タイプⅢaとタイプⅢbがあります
定義
タイプⅢa 全体を対象とし、解決手段(または課題)を切り口として各出願人の動向を整理します。
■全く初めての分野の場合は、「どこの国で」「誰が(どの出願人が)」「どのようにやっているか」の鳥瞰から始めます。
この分析の特徴
「どこの国で」を知るために「出願人住所国」を用いています。
(優先国は必ずしも出願人の国ではありません)
図1 Excellのマップ機能により作成 ファミリー単位でカウント
中国住所の出願人の出願が多数だとわかります。
図2
その中国出願人の出願は殆ど中国(自国)への出願で、中国から見た外国への出願は少しかありません。日本へは僅かに20ファミリーです。
この分布図から学べる事
つまり日本の特許だけ見ていても、中国のこの動きは判らないことになります。
図3
対照的なのが英国(GB)です。75ファミリー中、69ファミリーが英国外(英国にとっての外国)に出願しています。国の数も24(>19中国)と中国より多くなっています。
このように、セグメント化しながら見て行くと、大きな流れや傾向を掴めることが有ります。
■次に自社技術に近い部分にフォーカスして行きます
定義
タイプⅢb 特定部分を対象とし、解決手段(または課題)を切り口として各出願人の動向を整理します。
初期段階ならⅢaから、競争段階ならⅢbから始めると効果的です。
目的に応じて様々なマップがあります。
ポイント
この調査は研究開発の将来の方向を決める重要な情報となり得ます。ご依頼内容をお聞きしてⅠ、Ⅱ、Ⅲのどれで行くのかをご相談した上で(Ⅰ&Ⅲaのような混合型になる事も有ります)、「切り口項目」と呼ばれる調査観点(分類軸)を設定し、調べ、割り付け、議論、調査観点の修正を繰り返して進めます。この調査の間は、弊社調査員をお客様の研究チームの一員とみなして頂き、お気づきの情報を適宜ご提供頂きますと、より有用な結果が得られます。