ポイント
新規テーマに着手する時は、その領域にどの様な特許があるか把握する事が求められます。
数多くの新規テーマに伴う特許調査の中で、試行錯誤と共にノウハウを蓄積し、メソッドとして整備してきました。
以下に3つのメソッドをご紹介します。
いずれにも共通している事は、出来るだけ単純に考える事です。これによってポイントが明確になり、速さと正確さが増してきます。
単純にすることをST法と呼んでいます。SimpleThinkingを略したものです。
ST法には次の3つがあります
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1技術調査で威力を発揮する「特許リーディング法」
単に請求項の範囲を確認するのではなく、追試をするつもりで実施例を中心に読み、
・必要に応じて図を書く、
・試算を行うなどにより考察を深め、
発明者の経験を自分のものにする手法の事です
特許リーディングを行うと「頭の引き出し」が増え
仕事のパフォーマンスが向上します。
特許リーディング法を職場に導入すると
研究開発の速度アップが期待できます。
特許リーデング法は
・さっと読む
・じっくり読む
を適宜取り混ぜて実施し
効率的な技術把握を実現します。
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2発明発掘、無効資料調査で威力を発揮する「三行要約」
特許は自然法則を用いた課題解決の手段ですから
・〇〇の課題を
・□□で解決
・なぜなら◇◇だから
と三行に要約出来ます。
この三行要約は、もともと発明発掘の場で、
出てきたアイデアを明確にするために使っていました。
その後、無効資料調査を行う時に
無効化のロジックを考えるのにも使える事が判り
(有効資料を見出せる可能性が高くなる)
アイデアや対象特許は「三行要約」を作って管理する事を推奨しています。
更に「三行要約」を自分の言葉で短く書ける人は
仕事のパフォーマンスが高い
という傾向がわかり、トレーニングなども実施しています。
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3 発明発掘、無効資料調査に不可欠「進歩性の境目」
多くの知財教育では
・まず新規性の有無を確認する
・新規性があるものについて進歩性を確認する
と教えています。
しかし実際の審査では、
・進歩性が認められる
・よって新規性も認められる
と新規性と進歩性がセットで議論されます。
これは、選択発明の議論と呼ばれています。
私たちが取り扱う発明は
「ある特定の化合物(公知)に従来を超えた効果を見出し、解決に至った」
の様な「選択発明」が多く存在します。
従って
技術分野ごとに、具体的に、どの程度の効果だと進歩性が認められているかを学習します。
これによって、
・このアイデアは特許に出来そうか、
・この特許はなにを持ってくれば潰せそうか
を具体的に考察出来るようになります。
これが「進歩性の境目」の学習です。
関連する審査基準の抜粋版を載せました。ご確認ください。
この掲載は独立行政法人工業所有権情報・研修館に許諾済みです。
◆◆参考◆◆
少し前の審査基準には、
「新規性を確認し⇒新規性ありなら進歩性の確認」
というフローが出ていました。
このフローに従うと、明細書の本文に好ましい化合物例として沢山の化合物を書いておくと、その中にある化合物の一つに特段の効果がわかっても特許にならないことになります。
しかし、実際は特許として認められているので、このフローは本当に正しいのか?と何度か問い合わせしました。
最新版では、
「新規性と進歩性を同時に判断する」
というフローに訂正されています。
沢山の化合物の中から特定の課題に効くものを探し出すのは相当大変なことです。その努力に報いて権利を与え、そのような努力を推奨する事は、特許制度の基本思想(創意工夫の結果に権利を与え創意工夫を推奨する事で産業発達を促進する)にマッチしていますね。