障害となる特許がある時や、自社特許の有効性を確認したい時に実施します。
ご存じですか?
最近は
『新規性否定』では対応できず
『進歩性否定』が必要なものが増えてきました
【理由】
①公知例を良く調べて出願するようになった事
・調査ツールの発達
・出願人様(発明者や知財関係者)の努力
・調査会社,のマニュアル整備等によるサーチャーのスキルアップ
②特許庁の審査に海外文献も加えるようになった事
・出願件数が落ち着き調査キャパに余裕が出来た事が背景
【弊社の対応】
私たちは、技術的考察に基づいて
・調査ツールが苦手な部分(グラフや画像)を調べる(新規性)
・特許性主張ロジックの反論材料を探す(進歩性)
に注力しています。
このページでは、サーチャー(特許調査員)になると最初に鍛えられる基本的な調査手順「新規性否定」をご説明した後、「新規性否定の余地」と「進歩性否定」についてご説明します。
無効資料調査が必要な方、参考にしてください。
新規性否定
請求項の要件が全て書いてある資料(文献)を探す調査
どんなに素晴らしいアイデアであっても、組み合わせとして知られているものは「新規性が無い」として特許が与えられません。
この新規性の有無を確かめる調査は「出願前調査」と呼ばれます。
定型化された手順と基準でコンパクトな費用を定額で設定し依頼者様の利便性を高めています。
[対象請求項]
成分Aと成分Bと成分Cを含むインク組成物であって、さらに成分Dを含む
◆次の表を埋められる資料がゴールです◆
表1
要件 | 文献1 |
A | 〇 |
B | 〇 |
C | 〇 |
D | 〇 |
調査の手順
サーチャー(特許調査員)になると最初に鍛えられるのがこの調査です。
次のような手順で行われます。
step
1請求項からABCDを特定する
「濃色材料」「両親媒様物質」の様に、
請求項記載の単語だけでは何を指しているのかはっきりしない場合は、
本文の説明や実施例を参照します。
step
2ABCDの記載がある特許を検索・抽出する
この検索は、サーチャー向けスキル集などに手順とノウハウがまとめられ
「大会」が実施されるほど多くの方が従事しています。
・[日付]×[特許分類]×[キーワード]
の式などを組み合わせて300件~3,000件の規模の調査対象母集団を作ります。
step
3ABCD全てが書かれた文献から下記条件のものを選ぶ
条件1 本発明として書かれているもの
(説明)一つの明細書にABCD全てが書かれていても、Dが比較例(従来技術)として書かれていたら、ABCD全ての組み合わせが書かれている事にはなりません。
条件2 選択発明の余地が無いもの
(説明)一つの明細書にABCD全てが書かれていても、Dが沢山列挙された化合物の一つのような場合は「その化合物例から1つを見出した」という選択発明になる可能性が有ります。
ポイント
新規性が無いものの多くは出願の時点で除かれているのです。
新規性否定の余地(アドバンス)
現在の調査ツール/調査手順では漏れやすい資料を探す調査
現在の調査ツール(データベース)は、特許明細書の"テキスト"部分を対象としています。
また、サーチャーは業界語を出来る限り把握してキーワードを選びます。
そのため次のような公知例は"漏れ"る事があります。
現在の調査ツール/調査手順では漏れやすいケース
- グラフや図に示されている数値
- 画像として貼り付けられている表やその注釈
- 古い公報(電子化以前の出願)
- 古い公報(未収録)
- 他業界からの出願(異なる業界語を使用)
- 外国からの出願(翻訳された業界語)
参考弊社では次のように対応しています:
グラフや図を直接検索で抽出する事は出来ませんので、技術的な考察によってグラフや図が記載されている可能性のある母集団を作成し、一つ一つ確認します。
異なる業界語も技術的な考察によって選定します。
電子化以前の公報は多くがOCRによってテキスト化されていますのでOCRエラーを想定してキーワードを設定しますが、
不十分な事が多いため、技術的な考察によって母集団を作りPDF公報を一つ一つ確認します。
進歩性否定
出願人の主張を否定する資料を探す調査
出願人が次のような主張をして認めらたとき特許査定になりますので、この主張を否定する資料を探します。
[出願人の主張]
従来の
成分A+成分B+成分C
構成のインクで新たに問題となったリンギング性の課題が
成分Dの添加で解決した。
成分Dをインクに添加する事を示唆した文献(動機付けのある文献)は無く
さらにリンギング性は新たに知られた課題であり
成分Dを添加してリンギング性を改善する事は予想外であり着想が困難である。
[本発明]
成分A+成分B+成分C+成分D
[私たち無効資料チームがやる事]
成分Dをインクに添加する事を示唆した文献(動機のある文献)を探す
リンギング性は従来から知られた課題である事を示した文献や
改善の程度が従来同等である事を示した文献を探す。
これ等が揃えば出願人の主張を否定する事が出来ます。
◆次の表を埋められる資料がゴールです◆
表2
要件 | 文献1 | 文献2 |
A | 〇 | 〇 |
B | 〇 | |
C | 〇 | |
D | 〇 | |
動機 | 示唆されている | |
効果 | 従来を超えていない |
調査の手順
step
1意見書から特許査定時の出願人の主張内容を確認する
出願人の主張は「意見書」で確認します。「意見書」が複数ある場合は、特許査定を受けた時の「意見書」(一番新しい場合が多い)を用います。
step
2最も近い文献1を探す
「新規性否定」のSTEP2と同様の方法で検索・抽出を行います。
step
3Dの記載がある文献2を探す
要件Dを抽出するための式を作ります。この時、文献1との組み合わせを考慮して式を工夫します。
step
4文献1と文献2を組み合わせる理屈(無効化のロジック)を考える
文献1または文献2の記載の中から、文献1と文献2を組み合わせる事を示唆した部分を探します。
「示唆されている」は技術的考察に基づきます。サーチャー(特許調査員)の技術的知見に加え、
ご依頼人様(知財部門/発明部門の皆様)の見解をお聞きする事もあります。
「示唆されている」と言えない場合は、文献1または文献2を入れ替えて再度考察します。
step
5実施例等の効果が「従来を超えない」と主張できる資料を探す
効果の記載を抽出する式を作り、同様の効果は出願日時点で知られている事、効果の程度も特に際立っていない事を示す資料を探します。
ポイント
進歩性の議論はロジックの勝負です。
弊社ではフローチャートを作成して調査員全員で共有しています。
このフローチャートは審査基準に掲載されていたフローチャートに選択発明性を考慮した修正を加えたものです。
欲しい方は、メール(下記)にてご連絡ください。